【超重要速報】人員欠如減算回避?  障がい福祉サービス留意事項通知改正

〜人員欠如減算「猶予」新設が映し出す、業界の深刻な人手不足と人材紹介ビジネスの闇〜

■ はじめに:何が起きたのか

2026年5月、厚生労働省から障がい福祉サービスに関わる事業者にとって、見逃せない留意事項通知の改正案が示されました。

「突発的で想定が困難な事象によりやむを得ない事情が生じた場合の人員欠如減算の適用猶予」

──これが新設されたのです。出典:厚労省PDF(p.24)

一見、地味な改正に見えるかもしれません。しかしこの一文の裏側には、「もはや現場は人員基準を満たせない事業所が続出する」という国の現実認識と、人材紹介会社をめぐる根深い構造問題が透けて見えます。新規指定を取って半年は特に人員基準を満たすのが難しいので、知っておくだけで減算を回避できる可能性が上がります。

今回はこの改正の中身を整理しつつ、なぜ今このタイミングで猶予措置が必要になったのか、そして「適正認定事業者」という文言にまで踏み込んだ国の本気度について、深掘りしていきます。


■ 改正のポイント整理(㈥の新設条文)

まず、新設された条文の骨子を整理します。

🔹 適用される条件

  • 突発的で想定が困難な事象により、やむを得ない事情が生じたこと
  • 人員基準上必要とされる員数から「1割の範囲内」で減少したこと
  • 下記アからエのすべてに該当すること

🔹 猶予の内容

  • ㈠の規定にかかわらず、1年に1回に限り
  • 人員欠如発生月の翌々月まで(最長約3か月)
  • 介護給付費等の算定方法に基づく減算の適用を猶予

🔹 報告義務

  • 別紙様式に取組内容と事情を記載
  • 欠如発生月の翌月までに都道府県知事へ報告
  • 有効な求人票の写しを添付

🔹 ア〜エの要件

内容
ア.ハローワーク(公共職業安定所)または無料職業紹介事業(都道府県ナースセンター、福祉人材センター等)の活用
イ.民間職業紹介事業者を利用する場合は、「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度」の適正認定事業者を含むこと
ウ.公共/無料紹介を利用していても、自社ウェブサイトで採用情報を公表するなど積極的取組が望ましい
エ.一部職員に過度な業務負担とならないよう、適正な労働時間管理と体制整備に努めること

📌 福祉新聞も「障害報酬の職員欠如減算に特例 適用猶予は最長3カ月に延長」として報じています。福祉新聞


■ そもそも、なぜこんな猶予措置が必要になったのか?

1. 数字が物語る「異常事態」レベルの人手不足

直近の有効求人倍率を見てください。

2025年4月の福祉全般の有効求人倍率は4.50倍。そのうち障害福祉を第一希望とする最高数の有効求人倍率は6.91倍。 きょうされん『2025年職員不足の実態調査』

全産業平均が1.16倍前後で推移している中、障害福祉は約6倍
「求職者1人に対し、6.91件の求人が殺到している」という、もはや採用が成立しない水準です。

東京都に至っては、介護関係職種の有効求人倍率は 6.19倍(令和2年度時点)。東京都福祉局

つまり、真面目に採用活動をしていても、人員基準を満たせなくなる事業所が「普通に」発生してしまう状況になっているのです。

厚労省自身も、この改正の背景について「突発的な人員欠如において配置基準を満たさなくなった場合の人員基準欠如減算の猶予措置」として、業界の実態に踏み込んだと報じられています。高齢者住宅新聞

2. 「人員欠如減算」は事業所にとって死活問題

そもそも人員欠如減算は、サービス管理責任者やサービス提供職員などが基準を満たさない場合、所定単位数の30%または50%が減算される非常に重いペナルティです。KnowBe

採用が間に合わずに1人欠けただけで、事業所収入が半減するリスクがあるのです。これでは「人を採用するための原資」すら失われ、さらに採用が困難になるという負のスパイラルに陥ります。

国が「1割の範囲内」「年1回限り」と限定的にではあれ猶予を認めたのは、この負のスパイラルを放置すれば障害福祉インフラそのものが崩壊するという危機感の表れと言えるでしょう。


■ 真の論点:なぜ「適正認定事業者」がわざわざ条文に書かれたのか

ここが今回の改正で最も注目すべき点です。

通常、こうした告示・通知に民間の特定の認定制度が名指しで書き込まれることは稀です。にもかかわらず、わざわざ条文に──

「民間職業紹介事業者を利用する場合においては、医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者認定制度による適正認定事業者を含むこと」

と明記されたことには、明確なメッセージが込められています。

🔻 高額すぎる人材紹介手数料が、経営を破壊している

福岡県経営者協議会の調査によれば──

介護・保育分野の人材紹介手数料は平均80万円超。深刻な人手不足を背景に紹介会社を頼る福祉施設も少なくない一方、高額な手数料の支払いが介護施設などの経営を圧迫することが問題視されている。 福祉新聞

WAM(福祉医療機構)の調査でも、障害福祉サービス事業所の1件あたり平均人材紹介手数料は約139.4万円WAM調査報告

世話人の平均給与が月25万円台ということを考えると、年収の半分近くを紹介会社に持っていかれる構図です。

🔻 「採用してもすぐ辞める」返金トラブル

さらに問題なのは、早期離職時の返金(返戻金)をめぐるトラブル
「会社都合退職」と称して返金義務を回避するような悪質ケースも報告され、医師会は厚労省に対して紹介手数料の上限規制の導入を要請するに至っています。ジョイント介護

🔻 「適正認定事業者」とは何か

このような業界の闇に対抗する形で運用されているのが、JESRA(日本人材紹介事業協会)等が運営する 「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」 です。JESRA

認定要件には──

  • 就職後6か月以内の早期離職時の返戻金対応
  • 求職者・求人者双方への適正な情報提供
  • 紹介後のフォロー体制

等が含まれます。全国求人情報協会

国は今回の改正で、「人員欠如の猶予を受けたいなら、せめて“ちゃんとした紹介会社”を使え」という、踏み込んだ姿勢を見せたわけです。これは事実上、「悪質な人材紹介ビジネスへの公的な牽制」と読み解くことができます。


■ 現場の事業者が今すぐ準備すべきこと

この改正を「猶予されてラッキー」で終わらせてはいけません。実務的には、条件を満たすための事前準備が必須です。

✅ 今すぐチェックすべき5項目

  1. ハローワーク・福祉人材センターの求人登録は最新か?
    → いざという時、「求人票の写し」がすぐ出せる体制に。
  2. 自社ウェブサイトの採用ページは整備されているか?
    → 通知ウ項目「自ら採用情報をウェブサイトで公表」が明記されています。
  3. 現在利用している人材紹介会社は「適正認定事業者」か?
    → JESRA等の認定リストで要確認。未認定事業者のみの利用では、猶予が認められない可能性があります。
  4. 労働時間管理の体制は整っているか?
    → エ項目「過度な業務負担とならないよう」は、欠如時こそ問われます。36協定・残業管理の再点検を。
  5. 「別紙様式」と都道府県への報告フロー
    → 翌月までの報告期限は思った以上にタイトです。テンプレ化・責任者明確化を。

■ まとめ:この改正が突きつける、業界への「最後通牒」

今回の改正は、表面的には「優しい措置」に見えます。
しかしその実態は──

🟥 人員基準を満たせない事業所が続出することを、国が公式に認めた
🟥 高額紹介手数料の横行に、国が認定制度を通じて間接的なメスを入れた
🟥 採用努力の中身まで踏み込んで、事業者の責任を細かく問うようになった

という、「経営力・採用力・コンプライアンス力のない事業所は淘汰される」という強烈なメッセージでもあります。

人手不足を「やむを得ない事情」で済ませず、ハローワーク活用・適正認定事業者の選定・自社採用ブランディング・労務管理の4本柱を本気で整備する事業所だけが、これからの障害福祉サービスを担っていける──。

この通知改正は、そう静かに告げているように感じます。


📚 参考リンク

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